食べる喜びと、笑う自信をもう一度

「入れ歯は痛いもの、外れるもの、よく噛めないもの」
残念ながら多くの方が、入れ歯に対してこのような諦めにも似た印象をお持ちかもしれません。
しかし、私は決してそうではないと断言します。
一本一本の歯を丁寧に治療するのと同じように、一つひとつの工程を一切妥協せず作製された入れ歯は、まるでご自身の身体の一部のように機能し、食事や会話といった日々の営みを豊かで快適なものに変える力を持っています。
入れ歯治療は、単に失われた歯の「形」を補うことを目的とはしていません。
食べるという「機能」を回復させ、自然な口元という「審美性」を取り戻し、そして、それを使う方の「心」を満たすこと。
そのすべてを追求した、いわば、お口の中の医療装置を作製するという考え方に基づいています。
現在お使いの入れ歯にお悩みの方も、これから初めて入れ歯を作製される方も。
入れ歯治療に対する考え方と、その作製工程について詳しくご説明します。
入れ歯に関するよくあるお悩み
もし今お使いの入れ歯で、以下のようなお悩みを感じているとしたら、それは決して「仕方がないこと」ではありません。
そのお悩みは、よりお口にあった入れ歯を作製することで解決できる可能性があります。

- 食事の時に歯茎が痛む
特定の場所が強く当たり、噛むたびに痛みを感じる。 - 話していると外れそうになる
口を動かすと、入れ歯が浮き上がったり、ずれたりして会話に集中できない。 - 硬いものが噛めない
りんごや、お漬物など、少し歯ごたえのあるものが食べられない。
好きなものを食べることを、諦めてしまっている。 - 見た目が不自然に感じる
入れ歯だとすぐに分かってしまう見た目が気になり、人前で口を開けることに抵抗がある。 - 入れ歯と歯茎の間に食べ物が挟まる
食事のたびに、食べかすが入り込んでしまい不快に感じる。
これらの問題の多くは、入れ歯がお口の形や動きに合っていないことから生じています。
良い入れ歯の条件とは
快適で、長く使える良い入れ歯にはいくつかの条件があります。
以下の点を追求し、患者様一人ひとりにとって最良の入れ歯を作製することに全力を注いでいます。
お口へフィットさせる

お口の中の粘膜は、非常に繊細で複雑な形状をしています。
良い入れ歯の基本は、この粘膜の形に寸分の狂いなく適合していることです。
そのために、既製のトレー(型取りの器)だけでなく、患者様のお口専用の個人トレーを作製し、お口を動かした時の筋肉の動きまでを詳細に再現する特別な型取りを行います。
この丁寧な型取りが、痛みのない、吸い付くようなフィット感を生み出します。
機能的な噛み合わせ

入れ歯は、ただ歯が並んでいるだけでは機能しません。
食べ物を効率よく噛み砕き、その力を均等に受け止められるよう、上下の歯が正しく噛み合っていることが重要です。
「アーティキュレーター」という、顎の動きを再現する専門の器械を用い、患者様の顎の動きや、噛み癖までを考慮した機能的な噛み合わせを設計します。
自然な見た目(審美性)

入れ歯は、お顔の一部です。
人工の歯の大きさ、形、色、そして並べ方が、患者様のお顔立ちや年齢と調和していなければ不自然に見えてしまいます。
歯茎の部分の色合いも、自然に見えるための重要な要素です。
作製途中の段階で、実際にワックスの土台に歯を並べた「ろう義歯」をお口に入れていただき、見た目を確認しながら、患者様がご納得いくまで微調整を行います。
耐久性と清掃性

毎日お使いいただくものだからこそ、長く使える丈夫な素材であること、そして、清潔に保ちやすい設計であることが求められます。
汚れや臭いを吸収しにくい高品質な材料を選択し、清掃がしやすいシンプルな形態を心がけています。
入れ歯が完成するまでの流れ
質の高い入れ歯を作製するために、必要な工程を省略することなく、一つひとつ丁寧に進めていきます。
完成までには数回の通院が必要となります。
| 工程 | 内容 |
| 1. 検査・診断・治療計画 | 現在のお口の状態を詳しく拝見し、残っている歯や、顎の骨、粘膜の状態を検査します。 どのような入れ歯が適しているか、治療の計画をご説明します。 |
| 2. 1回目の型取り(概形印象) | お口の全体的な形を把握するため、既製のトレーで型取りを行います。 この型を元に、型取りで用いる「個人トレー」を作製します。 |
| 3. 2回目の型取り | 作製した個人トレーを用いて、お口の細部の形や、筋肉の動きまで写し取ります。 良い入れ歯作りの最も重要な工程の一つです。 |
| 4. 噛み合わせの記録 | ワックスで作られた「咬合床(こうごうしょう)」という装置を使い、上下の顎の正しい位置関係や、噛み合わせの高さを決定します。 |
| 5. ろう義歯の試適 | 咬合床の上に、人工の歯をワックスで並べた「ろう義歯」を作製します。 これを実際にお口の中に入れて、歯並びや色、噛み合わせ、発音などを確認し、必要であれば修正を加えます。 患者様にご納得いただけるまで、この工程を繰り返します。 |
| 6. 完成・装着 | ろう義歯をもとに最終的な入れ歯が完成します。 お口の中に装着し、当たりの強い部分などがないか最終的な調整を行います。 |
| 7. 定期的な調整・メンテナンス | 入れ歯が完成した後も定期的な検診が欠かせません。 お口の中は時間と共に少しずつ変化していきます。 その変化に合わせて入れ歯を調整し、残っている歯のクリーニングを行うことで、長く快適に使い続けることができます。 |
入れ歯の種類について
入れ歯には、保険適用のものから、より快適性や審美性を追求した自由診療のものまで様々な種類があります。
金属床義歯

歯茎に触れる部分が薄い金属(チタンやコバルトクロム)で作られた入れ歯です。
保険のレジン(プラスチック)に比べて、丈夫で薄く作れるため、お口の中の違和感が少なく発音しやすいのが特徴です。
また、金属は熱を伝えやすいため、食べ物の温度を感じやすく食事をより楽しむことができます。
ノンクラスプデンチャー

部分入れ歯で、歯に引っ掛ける金属のバネ(クラスプ)がないタイプの入れ歯です。
バネの代わりに、歯茎の色に近い、弾性のある特殊な樹脂で入れ歯を支えます。
金属が見えないため、見た目が非常に自然で審美性に優れています。
インプラント義歯(オーバーデンチャー)

数本のインプラントを顎の骨に埋め込み、それを土台として入れ歯を固定する方法です。
特に下の総入れ歯は、安定せずに悩まれている方が多いですが、インプラントで支えることで、まるでご自身の歯のように、ずれたり外れたりすることなくしっかりと噛むことができます。
力を入れているインプラント治療の技術を応用した、非常に安定性の高い入れ歯です。
今お使いの入れ歯でお悩みの方へ
「もう年だから」「入れ歯はこんなものだ」と、諦める必要はありません。食事は日々の生活における大きな楽しみの一つです。
お口に合った入れ歯を手に入れることで、食べられるものの種類が増え、ご家族やご友人との食事がもっと楽しく豊かなものになります。
患者様一人ひとりのお悩みと真摯に向き合い、その方にとって最良の解決策を一緒に考え、形にしていきます。
どうぞ、お気軽にご相談ください。